シチズンミュージアムは、時計愛好家や歴史好きの方にとって非常に興味深い施設です。西東京市田無町にあるシチズン時計本社内に設けられたこの博物館は、日本の時計産業の発展を物語る貴重な展示品が数多く収蔵されています。通常は一般公開されていない企業博物館でありながら、特別なイベントや見学プログラムを通じて、シチズンの100年以上にわたる歴史と技術革新の軌跡を体感することができます。
この記事では、シチズンミュージアムの基本情報から見学方法、開催されるイベント、そして関連する時計の歴史まで、知っておきたい情報を網羅的にご紹介します。特に、夏休み期間中に開催される親子向けの時計組み立て教室や、限定的に行われる見学ツアーについて詳しく解説し、この貴重な施設を訪れるための具体的な方法をお伝えします。
| この記事のポイント |
|---|
| ✅ シチズンミュージアムの基本情報と見学方法がわかる |
| ✅ 時計組み立て教室への参加方法と内容が理解できる |
| ✅ シチズンの歴史と企業理念について学べる |
| ✅ 関連する時計博物館や見学施設の情報も得られる |
シチズンミュージアムの基本情報と見学について
- シチズンミュージアムは非公開の企業博物館である
- シチズンミュージアムの場所は西東京市田無町にある
- シチズンミュージアムは2016年にオープンした新しい施設
- シチズンミュージアムでは100年分の時計の歴史を展示
- シチズンミュージアムではヴァーチャル体験も可能
- シチズンミュージアムの見学は限定的に可能
シチズンミュージアムは非公開の企業博物館である
シチズンミュージアムは、一般公開されていない企業博物館として運営されています。これは多くの企業博物館とは異なる特徴で、普段は社外の方が自由に見学することはできません。しかし、だからこそその価値は非常に高く、特別な機会に見学できた際の感動は格別なものとなります。
この非公開という性質により、シチズンミュージアムは企業の機密性を保ちながら歴史を保存する役割を果たしています。展示されている時計や資料の多くは、一般的な博物館では見ることのできない貴重なものばかりです。特に、開発途中のプロトタイプや企業内部の資料なども展示されており、時計産業の裏側を垣間見ることができる貴重な場所となっています。
シチズンミュージアムが非公開である理由の一つは、企業のブランド価値を守るためです。限定的な公開により、見学者にとって特別感のある体験を提供し、シチズンブランドへの愛着を深める効果を狙っています。また、見学者数をコントロールすることで、質の高い案内とサービスを提供することが可能になっています。
📍 シチズンミュージアムの特徴
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 公開状況 | 一般非公開（特別イベント時のみ） |
| 運営形態 | 企業博物館 |
| 見学対象 | 招待客、社会科見学、特別プログラム参加者 |
| 展示内容 | シチズンの歴史、技術開発、製品展示 |
企業博物館として非公開であることで、シチズンミュージアムは教育的価値も高めています。限られた機会だからこそ、見学者は真剣に展示を見学し、より深い学びを得ることができます。特に、学生や研究者にとっては、日本の時計産業の発展過程を詳細に学べる貴重な機会となっています。
シチズンミュージアムの場所は西東京市田無町にある
シチズンミュージアムは、東京都西東京市田無町6-1-12にあるシチズン時計株式会社の本社内に設置されています。最寄り駅は西武新宿線の田無駅で、徒歩約8分程度の距離にあります。この立地は、シチズンが1936年に田無工場を建設して以来、80年以上にわたって地域との深い結びつきを築いてきた歴史を物語っています。
田無という地域を選んだ理由は、当時の交通の便と広大な土地の確保にありました。青梅街道と西武新宿線があり、部品の輸送に便利だったことが決め手となりました。現在でも、その地理的優位性は変わらず、東京都心からのアクセスの良さを保っています。
🚃 アクセス情報
| 交通手段 | 詳細 |
|---|---|
| 最寄り駅 | 西武新宿線 田無駅 |
| 徒歩時間 | 約8分 |
| 住所 | 東京都西東京市田無町6-1-12 |
| 敷地面積 | 約2万坪（工場建設当時） |
シチズンミュージアムのある敷地は、かつて田無工場があった場所です。工場の最盛期には従業員数が4,772人に達し、地域経済に大きな影響を与えていました。現在は本社機能を中心とした施設となっていますが、敷地内には当時から残る桜の木もあり、歴史の面影を感じることができます。
田無駅からシチズンミュージアムまでの道のりは、ほぼ一本道で分かりやすくなっています。工場があった時代には、駅から工場まで人の列が続いていたという証言もあり、地域の発展に大きく貢献してきた企業の歴史を感じることができます。
現在のシチズンミュージアムの立地は、企業の歴史と地域との関係性を体現する場所でもあります。西東京市は、シチズンの卓球部を親善大使に任命するなど、現在でも密接な関係を維持しています。
シチズンミュージアムは2016年にオープンした新しい施設
シチズンミュージアムは、2016年にオープンした比較的新しい施設です。この年は、シチズンの企業としての成長と技術革新を振り返る重要な節目であり、これまでの歴史を体系的に展示する場所の必要性が高まったことが設立の背景にあります。
このミュージアムの設立は、シチズンのブランド価値向上と企業文化の継承を目的としています。従業員や関係者が自社の歴史と技術を深く理解し、誇りを持って仕事に取り組めるような環境作りの一環として企画されました。また、2018年には創業100周年を迎えるという節目を前に、歴史を整理し展示する必要性が高まっていました。
🏢 ミュージアム設立の背景
| 年代 | 出来事 |
|---|---|
| 2016年 | シチズンミュージアムオープン |
| 2018年 | シチズン創業100周年 |
| 2016年以降 | 段階的な展示拡充 |
| 現在 | 教育プログラムの充実化 |
ミュージアムの設計と展示は、株式会社乃村工藝社が手がけました。「社員一人一人が自社をプレゼンテーションできる開かれたミュージアムを目指して」という理念のもと、従業員の企業愛と誇りを育む場所として設計されています。
開館以来、シチズンミュージアムは段階的に展示内容を充実させています。最新の技術展示から歴史的な製品まで、幅広い年代の時計や関連技術を見ることができるようになっています。特に、エコ・ドライブ技術の発展過程や、機械式時計からクォーツ時計への技術革新の歴史は、見学者にとって非常に興味深い内容となっています。
新しい施設であることの利点は、最新の展示技術を活用できることです。ヴァーチャル体験やインタラクティブな展示など、従来の博物館では体験できない新しい形の学習機会を提供しています。
シチズンミュージアムでは100年分の時計の歴史を展示
シチズンミュージアムの最大の魅力は、シチズンの100年以上にわたる歴史を一堂に見ることができることです。1918年の創業から現在まで、日本の時計産業とともに歩んできたシチズンの軌跡が、貴重な実物展示とともに紹介されています。
展示の中核となるのは、歴代の代表的な時計です。1924年に完成した懐中時計第一号「シチズン」から、世界初の技術を搭載した革新的なモデルまで、技術の進歩とデザインの変遷を時系列で追うことができます。特に注目すべきは、昭和天皇が愛用されていたという懐中時計の展示で、当時の新聞記事とともに紹介されています。
⏰ 主要な展示時計の変遷
| 年代 | 製品名 | 技術的特徴 |
|---|---|---|
| 1924年 | 懐中時計「シチズン」第一号 | 国産時計の先駆け |
| 1952年 | 針式トリプルカレンダー付時計 | 日本製複雑時計の傑作 |
| 1959年 | パラウォーター | 国産初の完全防水腕時計 |
| 1965年 | クリスタルセブン | 自動巻時計の大ヒット商品 |
| 1976年 | クリストロンソーラーセル | 世界初の太陽電池充電式 |
ミュージアム内には修理工房も併設されており、展示予定の時計の修理が行われています。これにより、可能な限り稼働状態で展示することができ、見学者は実際に動いている時計の姿を見ることができます。この取り組みは、時計の魅力を最大限に伝える工夫の一つです。
展示は単なる製品の羅列ではなく、技術革新の物語として構成されています。例えば、クォーツ時計の開発競争や、エコ・ドライブ技術の誕生秘話など、開発者のエピソードとともに紹介されており、技術的な内容も分かりやすく説明されています。
パノラマ撮影でも入りきらないほど長い展示スペースには、シチズンが世界に先駆けて開発した革新的技術の数々が展示されています。音叉式時計、デジアナ表示、電波時計など、現在では当たり前となった技術の多くが、シチズンによって初めて実用化されたことがわかります。
シチズンミュージアムではヴァーチャル体験も可能
シチズンミュージアムの特徴的な取り組みの一つが、ヴァーチャル空間での体験です。物理的な展示に加えて、デジタル技術を活用した新しい形の博物館体験を提供しています。これにより、実際に施設を訪れることができない方でも、シチズンの歴史と技術に触れることができます。
「シチズン タイムレス・シティ」と呼ばれるヴァーチャル空間では、時計の上の街をテーマとした体験ができます。ここでは、時にまつわるさまざまな体験が用意されており、時計の歴史や技術を楽しみながら学ぶことができます。このような取り組みは、従来の博物館の概念を超えた新しい教育手法として注目されています。
💻 ヴァーチャル体験の特徴
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| プラットフォーム | シチズン タイムレス・シティ |
| 体験内容 | 時に関する様々な体験 |
| アクセス方法 | WEB上で体験可能 |
| 特徴 | 時計の上の街というユニークな設定 |
ヴァーチャルミュージアムの利点は、時間と場所の制約がないことです。世界中どこからでも、24時間いつでもアクセスすることができ、シチズンの歴史と技術に触れることができます。また、実物展示では困難な、時計の内部構造や動作原理の詳細な説明も、アニメーションや3D表示を用いて分かりやすく提供されています。
このヴァーチャル体験は、教育効果も高く評価されています。特に、若い世代の時計離れが課題となっている中で、デジタルネイティブ世代にも親しみやすい形で時計の魅力を伝える重要なツールとなっています。
現在のヴァーチャル体験は基本的な内容が中心ですが、今後はより高度なインタラクティブ要素の追加も検討されているものと推測されます。技術の進歩とともに、より没入感のある体験が提供される可能性があります。
シチズンミュージアムの見学は限定的に可能
シチズンミュージアムは非公開施設ですが、特定の条件下で見学することは可能です。主な見学機会としては、企業への来客案内、社会科見学の受け入れ、特別イベントの開催時などがあります。これらの機会を通じて、一般の方でもこの貴重な施設を見学することができます。
最も一般的な見学機会は、小学校の社会科見学です。地域の小学校を対象に、時計の製造工程や企業の歴史を学ぶ教育プログラムが提供されています。これらのプログラムでは、単なる見学だけでなく、時計の組み立て体験や部品に触れる体験なども含まれており、子どもたちにとって貴重な学習機会となっています。
👥 見学可能な機会
| 対象 | 内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| 企業来客 | 商談や会議に伴う案内 | 随時 |
| 社会科見学 | 地域小学校の教育プログラム | 年数回 |
| 特別イベント | 時計組み立て教室など | 夏休み期間 |
| 招待ツアー | 購入者向け特別企画 | 不定期 |
フラッグシップストア東京での購入者を対象とした招待ツアーも、過去に実施されています。これは、高額商品の購入者や抽選で選ばれた方を対象とした特別なプログラムで、通常では見ることのできない企業博物館を見学できる貴重な機会でした。
見学の際は、専門のガイドが案内を行い、展示品の詳細な説明や開発秘話などを聞くことができます。単純に展示を見るだけでなく、シチズンの技術者や関係者から直接話を聞ける機会もあり、より深い理解を得ることができます。
見学を希望する場合は、事前の申し込みや調整が必要です。一般公開されていない施設のため、突然訪問しても見学することはできません。また、見学可能な日時や人数にも制限があるため、希望する場合は早めの相談が重要です。
シチズンミュージアムで開催されるイベントと関連情報
- シチズンミュージアムでは夏休みに時計組み立て教室を開催
- シチズンミュージアムツアーは特別な機会に参加可能
- シチズンミュージアムでは社会科見学を受け入れている
- シチズンの歴史は1918年の創業から105年続いている
- シチズンの本社は2001年に田無に移転した
- シチズンの企業理念は「市民に愛され市民に貢献する」
- まとめ：シチズンミュージアムについて
シチズンミュージアムでは夏休みに時計組み立て教室を開催
シチズンミュージアムで最も注目される特別イベントが、夏休み期間中に開催される親子向けの時計組み立て教室です。このイベントは社会貢献活動の一環として実施されており、小学4年生から6年生の児童とその保護者を対象に、世界に一つだけのオリジナル腕時計作りを体験できる貴重な機会を提供しています。
2024年の開催実績を見ると、8月8日、9日、15日、16日の4日間で実施され、各日10組40名（最大）の参加者を招待しました。参加費は完全無料で、交通費のみ自己負担という非常にリーズナブルな設定となっています。このイベントの人気は非常に高く、定員を超える場合は抽選となります。
🔧 時計組み立て教室の詳細
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催時期 | 夏休み期間中（8月） |
| 開催時間 | 13:00～17:00（4時間） |
| 対象年齢 | 小学4年生～6年生 |
| 参加条件 | 保護者同伴必須 |
| 参加費 | 無料（交通費は自己負担） |
| 募集数 | 各日10組40名まで |
教室の内容は非常に充実しており、腕時計のムーブメント組み立て体験が中核となっています。参加者は、世界で最も出荷されている腕時計のムーブメントCal.2035の組み立てを実際に体験することができます。これは、時計の心臓部である駆動装置を自分の手で組み立てるという、めったにできない貴重な体験です。
さらに、オリジナル腕時計作りでは、文字板に自由に絵を描くことができ、世界に一つだけの腕時計を完成させることができます。この体験は、子どもたちの創造性を刺激し、時計への興味を深める効果があります。完成した時計は持ち帰ることができ、夏休みの思い出として長く大切にされています。
プログラムにはシチズンミュージアムの見学も含まれており、参加者は通常では見ることのできない企業博物館を見学することができます。これにより、時計の歴史や技術の進歩について学び、より深い理解を得ることができます。
応募方法は専用のWEBサイトから行われ、応募期間は通常7月上旬から中旬に設定されています。定員を超える場合は抽選となるため、参加を希望する場合は応募期間を逃さないよう注意が必要です。
シチズンミュージアムツアーは特別な機会に参加可能
シチズンミュージアムの見学ツアーは、特別な機会に限定して実施されています。過去には、シチズンフラッグシップストア東京での購入者を対象とした招待キャンペーンや、企業の重要な節目に合わせた特別ツアーなどが開催されています。
2017年には、シチズンフラッグシップストア東京での購入者を対象とした特別招待ツアーが実施されました。このツアーは、1月2日から31日の間に時計を購入した方を対象に、抽選でシチズンミュージアムに招待するという企画でした。通常は一般非公開の施設を見学できる貴重な機会として、多くの応募がありました。
🎫 特別ツアーの種類
| ツアータイプ | 対象者 | 実施頻度 |
|---|---|---|
| 購入者招待ツアー | フラッグシップストア購入者 | 不定期 |
| 企業記念ツアー | ステークホルダー | 周年記念時 |
| 教育機関向け | 学校・研究機関 | 年数回 |
| VIP向けツアー | 重要顧客 | 随時 |
特別ツアーの魅力は、専門ガイドによる詳細な解説にあります。単純に展示を見るだけでなく、開発秘話や技術的な背景、企業の歴史などについて、深い知識を持ったガイドから直接説明を受けることができます。これにより、一般的な博物館見学では得られない、より専門的で貴重な情報を得ることができます。
ツアーの時間は通常2時間半程度で、午後2時頃から4時半頃までのスケジュールで実施されることが多いようです。参加者は現地集合・現地解散となり、最寄りの西武新宿線田無駅から徒歩約8分で会場に到着することができます。
これらの特別ツアーに参加するためには、事前の応募や招待が必要です。自由参加ではなく、限定された機会であることが特徴です。そのため、参加を希望する場合は、シチズンの公式サイトやフラッグシップストアの情報を定期的にチェックし、募集開始の情報を見逃さないことが重要です。
特別ツアーでは、100年分の歴史を語る時計の展示を間近で見ることができ、その圧巻の展示は参加者に深い感動を与えています。時計産業の発展過程を実物とともに学べる貴重な機会として、多くの参加者から高い評価を得ています。
シチズンミュージアムでは社会科見学を受け入れている
シチズンミュージアムでは、地域の小学校を対象とした社会科見学を積極的に受け入れています。これは企業の社会貢献活動の一環として実施されており、子どもたちに日本の時計産業の歴史と技術を学ぶ機会を提供しています。
社会科見学のプログラムは、小学校の学習指導要領に対応した内容で構成されています。産業の発展、技術の進歩、企業の社会的役割など、社会科で学ぶべき要素を実物展示とともに学習することができます。特に、日本の製造業の優秀さや技術力の高さを、具体的な事例を通じて理解することができる貴重な学習機会となっています。
📚 社会科見学プログラムの内容
| 学習項目 | 内容 | 教育効果 |
|---|---|---|
| 企業の歴史 | シチズンの創業から現在まで | 歴史的思考力の育成 |
| 技術の進歩 | 時計技術の発展過程 | 科学的思考力の向上 |
| 製造工程 | 時計の作り方と品質管理 | 産業理解の深化 |
| 社会貢献 | 企業の地域との関係 | 社会性の育成 |
見学では、時計の部品を実際に触る体験も用意されています。ピンセットでつまむような小さな部品に直接触れることで、時計製造の精密さと技術者の技能の高さを体感することができます。この体験は、子どもたちに「時計ってすごい」という驚きと感動を与え、技術や製造業への興味を喚起する効果があります。
プログラムには時計の組み立て体験も含まれており、参加した児童は簡単な時計の組み立てを体験することができます。これにより、物作りの楽しさや難しさを実感し、技術者の仕事への理解を深めることができます。
社会科見学の受け入れは年数回実施されており、主に西東京市内や近隣地域の小学校が対象となっています。見学を希望する学校は、事前にシチズンの担当部署に連絡し、日程調整を行う必要があります。
このような教育プログラムの実施により、シチズンは次世代の人材育成に貢献しています。子どもたちが日本の技術力の高さを実感し、将来的に技術分野への進路を選択するきっかけとなることも期待されています。また、地域との結びつきを強化し、企業の社会的責任を果たす重要な活動として位置づけられています。
シチズンの歴史は1918年の創業から105年続いている
シチズンの歴史は、1918年（大正7年）の創業から現在まで105年以上にわたって続いています。創業者の山崎亀吉が「国産時計を作りたい」という志を持って高田馬場で始めた尚工舎時計研究所が、現在の世界的時計メーカーの出発点でした。
創業の背景には、当時の日本における時計の輸入依存という状況がありました。高級な時計はすべて海外からの輸入品で、一般的な市民には手の届かない価格でした。山崎亀吉は、一般の人々が使える価格で高品質な国産時計を作るという目標を掲げ、時計製造に必要な技術と人材の育成から始めました。
📅 シチズン歴史年表（主要な出来事）
| 年代 | 出来事 | 意義 |
|---|---|---|
| 1918年 | 尚工舎時計研究所創立 | 創業 |
| 1924年 | 懐中時計第一号「シチズン」完成 | 国産時計の実現 |
| 1930年 | シチズン時計株式会社設立 | 企業としての基盤確立 |
| 1936年 | 田無工場建設 | 本格的な量産体制 |
| 1976年 | 世界初のアナログ式太陽電池時計 | 技術革新の象徴 |
最初の懐中時計「シチズン」が完成したのは1924年で、創業から6年の歳月をかけた研究開発の成果でした。この時計に「シチズン（市民）」という名前を付けたのは、当時の東京市長だった後藤新平でした。「永く広く市民に愛されるように」という願いが込められたこの名前は、現在でも企業理念の根幹を成しています。
シチズンの技術開発への取り組みは創業当初から一貫しています。時計学校を設立して技術者を育成し、部品から製造機械まで自社で開発するという徹底した品質管理体制を築きました。この姿勢が、後の数々の世界初技術の開発につながっています。
昭和天皇の愛用品となったことも、シチズンの歴史における重要なエピソードです。品質の高さが認められ、皇室でも使用されるほどの信頼を得ることができました。これは、国産時計の技術水準が国際レベルに達したことを示す象徴的な出来事でした。
戦後の高度成長期には、田無工場の従業員数が4,772人に達するなど、急速な発展を遂げました。この時期に、クリスタルセブンなどの大ヒット商品を生み出し、日本の時計産業の発展をリードしました。現在に至るまで、シチズンは技術革新を続け、世界的な時計メーカーとしての地位を確立しています。
シチズンの本社は2001年に田無に移転した
シチズンの本社は、2001年に現在の西東京市田無町に移転しました。それ以前は1970年代から新宿三井ビルに本社機能があり、開発や製造は田無工場で行われるという分散型の組織構成でした。本社移転により、企業機能の統合と効率化が図られました。
田無への本社移転の背景には、工場機能の変化があります。2000年代に入ると、製造設備は徐々にグループ会社や海外拠点に移転し、田無の役割は開発と管理機能が中心となりました。広大な工場跡地を有効活用し、企業の中核機能を集約する拠点として再整備されたのが現在の本社です。
🏢 本社移転の経緯
| 時期 | 本社所在地 | 田無の役割 |
|---|---|---|
| 1970年代～2001年 | 新宿三井ビル | 製造・開発拠点 |
| 2001年～現在 | 西東京市田無町 | 本社・開発・博物館 |
本社移転により、各部門の連携が大幅に改善されました。以前は、プロジェクトの会議のたびに各部門から田無に人が集まる必要がありましたが、移転後は日常的な連携が可能になり、開発効率の向上が実現されました。
現在の本社は、緑豊かな環境に恵まれています。敷地内には創業当時から残る桜の木があり、四季の移ろいを感じながら働くことができる環境となっています。これは、従業員の働きやすさと創造性の向上に寄与していると考えられます。
本社移転と同時に、地域との関係性も新たな段階に入りました。工場時代は従業員の多さで地域経済に貢献していましたが、本社機能の中心となった現在は、より質的な地域貢献に重点が置かれています。シチズンミュージアムの設立や教育プログラムの充実は、この新しい地域貢献のあり方を示しています。
また、本社移転により企業のブランディングにも変化が生まれました。製造業としてのイメージから、技術開発と革新をリードする企業としてのイメージへの転換が図られ、シチズンミュージアムはその象徴的な施設として位置づけられています。
シチズンの企業理念は「市民に愛され市民に貢献する」
シチズンの企業理念である**「市民に愛され市民に貢献する」**は、創業時の精神を現在まで受け継いでいる企業の根幹となる価値観です。この理念は、1924年に完成した第一号懐中時計に「シチズン（市民）」と名付けられた時から一貫して貫かれています。
この理念の背景には、一般市民のための時計作りという創業者の志があります。当時の輸入時計が50～60円だった時代に、12円50銭という価格で高品質な時計を提供することで、より多くの人々に時計を普及させることを目指しました。現在の価値に換算すると、従来品が15～20万円程度だった中で、3～5万円程度の価格設定だったことになります。
💎 企業理念の実践例
| 分野 | 具体的な取り組み | 効果 |
|---|---|---|
| 技術開発 | エコ・ドライブ技術 | 環境負荷軽減 |
| 社会貢献 | 時計組み立て教室 | 次世代教育 |
| 地域貢献 | 卓球部親善大使活動 | スポーツ振興 |
| 品質向上 | 10年保証制度 | 消費者保護 |
エコ・ドライブ技術の開発は、この理念を現代的に体現した取り組みです。「光がある限り、動き続ける」というコンセプトのもと、電池交換の必要がない時計を開発することで、廃棄電池による環境負荷を大幅に削減しています。これは、人・社会・環境すべてに優しい技術として、まさに「市民に貢献する」理念の実現です。
シチズンミュージアムでの教育活動も、この理念の実践例です。次世代への技術継承と時計文化の普及を通じて、社会全体の発展に貢献しています。特に、夏休みの時計組み立て教室では、参加費を無料にすることで、経済的な制約なく多くの家庭が参加できるよう配慮されています。
企業のサステナビリティへの取り組みも、この理念に基づいています。「みんな」が「ずっと」快適に身に着けられる時計作りを目指し、長期間使用できる耐久性のある素材の開発や、時代を超えて愛されるデザインの追求が続けられています。
10年保証制度の導入も、市民への貢献の具体例です。クォーツ時計の弱点である電子部品の故障に対して、メーカーが長期間の責任を持つことで、消費者が安心して使用できる環境を提供しています。これは、単に商品を売るだけでなく、長期的な関係性を重視する企業姿勢の表れです。
まとめ：シチズンミュージアムについて
最後に記事のポイントをまとめます。
- シチズンミュージアムは西東京市田無町にある一般非公開の企業博物館である
- 2016年にオープンした比較的新しい施設で最新の展示技術を活用している
- シチズンの100年以上の歴史と技術革新の軌跡を実物展示で学ぶことができる
- 夏休み期間中に親子向けの時計組み立て教室が開催され参加費は無料である
- 小学4年生から6年生を対象とした教育プログラムが充実している
- ヴァーチャル空間での体験も可能でWEB上からアクセスできる
- 社会科見学や特別ツアーなど限定的な見学機会が提供されている
- 最寄り駅は西武新宿線田無駅で徒歩約8分の立地にある
- 企業理念「市民に愛され市民に貢献する」が博物館運営にも反映されている
- 創業1918年から現在まで105年以上の歴史を持つ老舗企業である
- 昭和天皇も愛用された懐中時計など貴重な展示品が多数ある
- エコ・ドライブ技術など世界初の革新的技術の開発過程を学べる
- 時計の部品に触れる体験やムーブメント組み立て体験ができる
- 専門ガイドによる詳細な解説で開発秘話や技術的背景を知ることができる
- 地域との連携を重視し西東京市の親善大使としても活動している
調査にあたり一部参考にさせて頂いたサイト
- https://citizen.jp/event2022/newproduct/2nd/museum/index.html
- https://www.citizen.co.jp/release/news/detail/2023/20230707.html
- https://citizen.jp/flagshipstore/info/2017.html
- https://www.citizen.co.jp/release/news/detail/2024/20240701.html
- https://www.nomurakougei.co.jp/achievements/page/citizen-museum/
- https://www.citizen.co.jp/
- https://www.taiando.com/CITIZEN/CITIZEN_MUSEUM.html
- https://city.citizen.jp/museum/
- https://www.skylarktimes.com/?p=41552
- https://x.com/CITIZENWATCHJP/status/1543731744897384454
