オメガのスピードマスターレーシングが生産終了したという情報が時計愛好家やコレクターの間で話題になっています。公式発表の詳細が少ない中、このモデルの廃盤理由やその影響を理解することは、現在所有している方や購入を検討している方にとって重要な関心事となっているでしょう。

本記事では、オメガ スピードマスター レーシングの生産終了に関する情報を詳しく解説します。生産終了時期や廃盤の理由、後継モデルの存在、そして市場への影響や買取相場の変化など、多角的な視点からこのモデルの現状と今後の見通しについて探っていきます。長く愛されてきたスピードマスターレーシングの魅力と、生産終了後のコレクション価値について、確かな情報をお届けします。
記事のポイント!
- オメガスピードマスターレーシング生産終了の背景と時期について理解できる
- 生産終了による市場価格や買取相場への影響が分かる
- 後継モデルの有無や他のスピードマスターとの違いを比較できる
- 中古市場での動向や価値の変動について把握できる
オメガ スピードマスター レーシングが生産終了した背景と詳細情報
- 生産終了時期は2010年代後半に確認されている
- 廃盤理由はブランド戦略と新技術導入のためと考えられる
- 生産終了したレーシングは40mmサイズが特徴的だった
- 後継モデルはレーシング マスタークロノメーター(44.25mm)が登場
- 正規店の在庫状況はすでに枯渇している
- 中古市場での価格はモデルにより30万円台から推移している
生産終了時期は2010年代後半に確認されている
オメガ スピードマスター レーシングの生産終了時期については、正確な公式発表日が明らかにされていない状況です。しかし、このモデルは2010年代後半に生産が終了したことが確認されています。銀座エバンスのブログでは「2010年代後半に生産終了となりました」と言及されており、この時期に同モデルの製造が打ち切られたと考えられます。
生産終了の正確な日付が公式に告知されていないことは、高級腕時計業界ではよくあることです。多くの場合、高級時計ブランドは生産終了を事前に大々的に発表することは少なく、むしろ静かに製造を停止する傾向があります。これはコレクターの間で「最後の一本」を求める動きが起こるのを避けるためかもしれません。
それでも市場の動きを見ていると、2017年から2018年頃を境に新品の流通量が徐々に減少していったことが窺えます。三愛時計店のブログでは2018年に「生産終了が決定した」という記述があり、小林時計店のブログでも2018年9月に「この時計が生産終了することになりました」と書かれています。これらのタイミングで正規販売店への連絡があったと推測されます。
生産終了の際、市場に残っていた在庫は徐々に減少し、現在では正規店での新品購入はほぼ困難な状況になっています。ただ、一部の販売店では2018年から2019年にかけても在庫が残っていたケースもあったようで、完全に市場から消えるまでには時間がかかったようです。
スピードマスターシリーズは、オメガの中でも特に歴史のあるコレクションで、定期的なモデルチェンジやラインナップの整理が行われることがあります。レーシングモデルもその流れの中で生産が終了し、新たな技術やデザインを取り入れたモデルへと移行していったと考えられるでしょう。
廃盤理由はブランド戦略と新技術導入のためと考えられる
オメガがスピードマスターレーシングを廃盤にした正確な理由については公式な発表がありませんが、いくつかの要因を分析することができます。廃盤の理由としては時計業界のトレンド変化とオメガのブランド戦略が主に挙げられています。
まず一つ目の理由として、時計業界全体での技術革新の流れがあります。オメガは常に新しい技術やデザインを取り入れることで知られており、スピードマスターレーシングが登場した当時は革新的だったコーアクシャルムーブメント(Cal.3330)も、次第に最新の技術に置き換えられる時期が来たのでしょう。実際、後継モデルとなるレーシング マスタークロノメーターにはCal.9900という新型ムーブメントが搭載され、パワーリザーブも52時間から60時間へと延長されています。
二つ目の理由としては、オメガのブランド戦略が考えられます。スピードマスターシリーズはプロフェッショナル向けの「ムーンウォッチ」を中心に、様々なバリエーションが展開されていますが、ラインナップが多すぎるとブランドの方向性が分かりにくくなる可能性があります。そのため、人気の高いモデルを残しつつ、一部のラインを整理することでブランドイメージを明確にする戦略をとったと推測されています。
また、製造コストや生産効率の問題も関係している可能性があります。40mmサイズのレーシングには高性能なコーアクシャルムーブメントが搭載されており、製造コストが比較的高いモデルでした。オメガとしては、新しい技術を採用しつつ、より効率的な生産体制を構築するために、特定のモデルの生産を終了することを決定したのかもしれません。
さらに、市場動向の変化もあったでしょう。時計のサイズトレンドとして、一時期は大型化が進みましたが、近年は再び適正サイズへの回帰も見られます。この流れの中で、40mmモデルを一旦終息させ、44.25mmモデルに統合した後、改めて41mmサイズ前後の新モデルを展開するという戦略も考えられます。
生産終了したレーシングは40mmサイズが特徴的だった

生産終了したスピードマスターレーシングの最大の特徴は、そのケースサイズです。40mmという絶妙なサイズ感は、多くの愛好家から支持されていました。この40mmサイズは「丸みのあるデザイン」と相まって、スタイリッシュでありながらも腕に馴染みやすいモデルだったと評価されています。
このサイズ感は特に日本人を含むアジア人の腕にフィットしやすく、また「細身の腕の方やスーツでの仕事をされている方には邪魔にならず身に着けやすい」という大きなメリットがありました。これはビジネスシーンでの使用を考えるユーザーにとって重要なポイントであり、現在のレーシングモデル(44.25mm)よりも汎用性が高いと言えるでしょう。
デザイン面では、文字盤のインダイヤルに「クルドパリ(Clous de Paris)」と呼ばれるピラミッド状の模様が施されており、これがレーシングカーのメーターパネルやカーボン製部品の表面模様を思わせるデザインとなっていました。この特徴的な装飾によって、よりスポーティーな印象を与えながらも、スタイリッシュさも兼ね備えた時計に仕上がっていたのです。
また、カラーバリエーションの豊富さも特筆すべき点です。生産終了したレーシングモデルは、青/黒、黒/白、グレー/黒、黒、白など様々なカラーが展開されており、自分の好みや使用シーンに合わせて選ぶことができました。特にグレー文字盤にイエローのアクセントカラーを配したモデル(326.30.40.50.06.001)や、ブルー文字盤の326.30.40.50.03.001は、現在でも人気が高く、中古市場でも需要があるモデルとなっています。
機能面では、自動巻きのコーアクシャルムーブメント(Cal.3330)を搭載し、耐磁性能に優れていた点も魅力でした。このムーブメントは、オメガ独自の技術を採用しており、一般的な自動巻きムーブメントよりもメンテナンス頻度が少なくて済むという利点がありました。また、100メートル防水という実用的な仕様も、日常使いに適した時計として評価されていました。
後継モデルはレーシング マスタークロノメーター(44.25mm)が登場
生産終了したスピードマスターレーシング40mmの後継モデルとして、2017年に新作発表されたのが「スピードマスター レーシング マスタークロノメーター」です。このモデルは、前身の良さを継承しつつも、サイズや機能面で大幅なアップグレードが施されています。
最も大きな変更点は、ケースサイズの拡大です。40mmから44.25mmへとサイズアップされ、より存在感のある時計に生まれ変わりました。このサイズ変更は、当時の時計業界での大型化トレンドに合わせたものと考えられますが、細身の方にとっては大きすぎると感じる可能性もあります。一方で、体格の良い方にとっては、このサイズ感がむしろ魅力的に映るでしょう。
ムーブメントも一新され、最新のコーアクシャルマスタークロノメーターCal.9900が搭載されました。このムーブメントは、スイス連邦計量・認定局(METAS)による厳格な認証を受けており、日差0秒〜+5秒という高精度と15,000ガウスの耐磁性能を誇ります。また、パワーリザーブも従来の52時間から60時間へと延長され、実用性が大幅に向上しています。
デザイン面でも変更が加えられ、インダイヤルのレイアウトが3カウンターから2カウンターへと変更されました。具体的には、3時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンド秒針を配置し、6時位置にはデイト表示が追加されています。これにより、よりモダンでスタイリッシュな印象となり、従来モデルとは一線を画す存在となりました。
カラーバリエーションについても、ホワイト文字盤(329.30.44.51.04.001)、ブラック文字盤(329.30.44.51.01.001)、ブラック×オレンジ(329.30.44.51.01.002)、グレー(329.30.44.51.06.001)など、多彩な選択肢が用意されています。特にホワイト文字盤のモデルは、「パンダダイヤル」と呼ばれる白地に黒のインダイヤルを配したデザインで、スポーティかつ上品な印象を与えます。
ただし、価格帯も上昇しており、40mmモデルが新品で50万円前後だったのに対し、44.25mmモデルは新品で100万円前後となっています。高性能化に伴うコストアップは避けられないものの、価格差は大きく、購入を検討する際には予算との兼ね合いも考慮する必要があるでしょう。
正規店の在庫状況はすでに枯渇している
スピードマスターレーシング40mmの正規店での在庫状況については、2018年から2019年頃にはすでに減少傾向にあり、現在ではほぼ枯渇していると言えます。銀座エバンスのブログでは2022年5月の時点で「生産終了となりましたが、当店では現在、新品が5色(青/黒、黒/白、グレー/黒、黒、白)から選べます」と記載されており、一部の正規店では終息後もしばらく在庫が残っていたことが伺えます。
しかし、三愛時計店のブログでは2018年時点で「メーカーや当店も無くなり次第終了のため、お早めにご購入をおススメします」と書かれており、すでに在庫の減少が顕著だったことが分かります。また、小林時計店のブログでも2018年9月に「当店には残り1,2本となってしまいました」と記載されています。このことから、生産終了の発表後は比較的早いペースで正規店の在庫が減少していったと考えられます。
正規販売店での在庫状況は店舗によって異なりますが、現在では新品の入手はかなり困難になっています。オメガの正規販売店では、基本的に最新モデルが中心となるため、生産終了となったモデルは徐々に店頭から姿を消していきます。特に都心部の大型店舗では、新作の入れ替わりが早いことから、生産終了モデルの在庫がなくなるのも早い傾向にあります。
それに対し、一部の地方店舗や規模の小さな正規店では、在庫の回転率が比較的ゆっくりしており、生産終了後も一定期間は在庫を保持している可能性があります。そのため、どうしても新品での購入を希望する場合は、複数の正規店に問い合わせることが重要です。また、オメガの公式サイトでも、取り扱いモデルの最新情報が確認できるため、まだ販売リストに掲載されているかどうかを確認することも一つの方法です。
ただし、現時点(2025年2月)ではオメガの公式サイトからもスピードマスターレーシング40mmの掲載はなくなっており、正規ルートでの新品入手はほぼ不可能と考えるべきでしょう。今後は並行輸入店や中古市場が主な入手経路となります。
中古市場での価格はモデルにより30万円台から推移している
生産終了したスピードマスターレーシング40mmの中古市場での価格動向を見てみると、モデルやカラーによって異なるものの、おおよそ30万円台から推移していることがわかります。スピードマスターレーシングの定価は50万円前後でしたが、中古市場では若干値下がりした価格で取引されています。
特に一般的なブラック文字盤(326.30.40.50.01.001)の中古価格は、状態や付属品の有無にもよりますが、30万円台中盤から40万円前後で取引されているケースが多いようです。これは定価の約60〜70%程度の価格帯となり、高級時計としては比較的堅調な価格を維持していると言えるでしょう。
一方、カラーバリエーションによって需要に差があり、それが価格にも反映されています。例えば、グレー文字盤にイエローアクセントを配した人気モデル(326.30.40.50.06.001)や、ブルー文字盤(326.30.40.50.03.001)は、比較的高値で取引される傾向にあります。特にブルー文字盤は、44.25mmのレーシングマスタークロノメーターには存在しないカラーであることから、希少性が高まり、状態の良い個体では定価に近い価格がつくこともあるようです。
中古市場での価格は、時計の状態に大きく左右されます。特に、使用感の少ない美品や、箱や保証書などの付属品が揃った個体は高値がつきやすく、一方で傷や劣化が目立つ個体は価格が下がる傾向があります。また、メンテナンス履歴がしっかりしている時計も評価が高く、特にオーバーホールなどのメンテナンスを受けた個体は安心感から価格が上乗せされることもあります。
リセールバリューという観点では、スピードマスターレーシングのリセールバリューは約42%〜55%とされており、これは高級時計としては平均的な水準です。例えば、スピードマスターレーシング326.30.40.50.01.002の買取価格は22万円、リセールバリューは42.4%という実績があります。また、スピードマスターレーシング40mmのブラック×シルバー(326.30.40.50.01.002)やグレー×イエロー(326.30.40.50.06.001)などの特徴的なカラーモデルは、コレクターからの需要も高く、比較的価格が安定している傾向にあります。
生産終了から時間が経過するにつれて、良好な状態の個体は徐々に市場から減少していくため、今後は希少性が高まり、価格が上昇する可能性もあると言えるでしょう。

オメガ スピードマスター レーシングが生産終了したことによる市場への影響
- 買取相場は希少性により上昇傾向にある
- レーシングが安いと言われる理由はカラーバリエーションの多さにある
- 資産価値は他のスピードマスターよりやや控えめだが安定している
- コーアクシャルムーブメントの耐久性が中古市場での評価を支えている
- 人気カラーはグレー×イエローとブルーダイヤルが高評価
- 値上がり傾向は特に限定カラーや美品で顕著になっている
- まとめ:オメガ スピードマスター レーシング生産終了後も中古市場での価値は堅調
買取相場は希少性により上昇傾向にある
オメガ スピードマスター レーシングの買取相場は、生産終了により徐々に上昇傾向にあります。一般的に、高級時計の世界では生産終了したモデルは「希少性が高まる」ことで需要が増え、買取価格が上がる傾向があります。スピードマスターレーシングも例外ではなく、特に状態の良い個体や人気カラーのモデルは、高額査定がつくようになってきています。
買取相場を具体的に見てみると、スピードマスターレーシング 326.30.40.50.01.002の買取価格は22万円程度で、定価518,400円に対するリセールバリューは約42.4%とされています。また、別の情報源では、スピードマスター レーシング(型番不明)の買取価格が32万円、買取率が約52.8%という実績も記録されており、モデルやカラー、状態によって買取価格に差があることがわかります。
生産終了直後は、「今のうちに手に入れたい」という駆け込み需要が発生することがあり、この時期に買取価格が一時的に上がる傾向があります。スピードマスターレーシングの場合も、生産終了が知られるようになった2018年頃から買取価格が少しずつ上昇し始めたと考えられます。
ただし、長期的な買取相場の動向は不透明な部分もあります。後継モデルの存在や市場での供給量によって価格が変動する可能性があるからです。例えば、後継モデルのレーシングマスタークロノメーターが現行モデルとほぼ同じ仕様で改良された形で登場したことで、40mmレーシングの独自性が保たれ、買取相場も安定的に推移している側面があります。一方で、44.25mmサイズという大きな変更点があったことで、40mmサイズを求める層からの需要が継続し、それが買取価格の下支えになっていると考えられます。
また、買取相場に大きく影響するのが時計のコンディションです。スピードマスターレーシングの場合、純正のブレスレットや付属品が揃っているかどうか、ケースの傷の状態などが査定額に直結します。特に、箱や保証書、余りコマなどが揃った美品は高値で買い取られる傾向にあるため、売却を検討している人は日頃からのケアやメンテナンスを怠らないことが重要です。
レーシングが安いと言われる理由はカラーバリエーションの多さにある
スピードマスターレーシングが「安い」と言われる理由はいくつか考えられますが、その大きな要因の一つがカラーバリエーションの多さです。スピードマスターレーシングは多彩なカラーバリエーションを展開しており、これが中古市場での価格に直接影響していると指摘されています。
まず、シリーズ全体の人気度が価格に影響しています。スピードマスターレーシングは、オメガの中でもエントリーモデルとして位置付けられることが多く、同じスピードマスターシリーズのプロフェッショナルモデルと比べて市場での需要が控えめです。そのため、中古市場でも価格が安定しやすい傾向があります。同じスピードマスターでも「ムーンウォッチ プロフェッショナル」などの方が人気が集中し、その結果として相対的にレーシングは安く感じられるわけです。
特に顕著なのが、カラーバリエーションが多いことによる「需要の分散」です。スピードマスターレーシング40mmには、ブラック、ホワイト、グレー×イエロー、ブルー、ブラック×シルバーなど多数のカラーバリエーションが存在します。好みのカラーに人気が分散してしまうため、特定のモデルに需要が集中せず、結果的に中古価格帯も下がりやすくなります。一般的に、カラーバリエーションが限られた時計の方が、希少性が高まりやすく、高値で取引される傾向があります。
また、製造コストを抑える工夫も「安さ」の要因です。レーシングモデルは、自動巻きのコーアクシャルムーブメントを採用しているものの、製造の効率化が図られており、素材にはステンレススティールやセラミックベゼルを使用して高い耐久性を維持しつつも価格を抑えるための工夫がなされています。このような戦略的なコスト管理が定価に反映され、結果的に中古市場での価格も抑えられていると考えられます。
さらに、コーアクシャルという技術の一般化も価格に影響している可能性があります。オメガのコーアクシャル機構は1974年に開発され、1980年に特許を取得した画期的な機能でしたが、2014年にはその上位互換である「マスターコーアクシャル」が登場しました。かつて最先端だったコーアクシャル技術が、いわば標準装備のような位置づけになったことで、古いモデルの相対的な価値が低下したという見方もできるでしょう。
このようにスピードマスターレーシングが「安い」と言われる背景には様々な要因がありますが、それは決して品質が低いからではなく、市場での需要と供給のバランスや、製品ラインナップにおける位置づけによるものだということを理解しておく必要があります。
資産価値は他のスピードマスターよりやや控えめだが安定している

スピードマスターレーシングの資産価値について考えると、他のスピードマスターシリーズと比較してやや控えめながらも、安定した価値を保持していると言えます。スピードマスターシリーズ全体のリセールバリューは35%〜52%とされており、レーシングはその中でも42%〜55%と、比較的堅調な数字を維持しています。
資産価値が控えめな理由の一つとして、レーシングモデルの人気がプロフェッショナルシリーズほど高くないことが挙げられます。人気が高いほど市場での需要が増し、中古価格の安定や上昇が期待できるため、レーシングモデルは相対的に資産価値が控えめなのです。例えば、プロフェッショナルモデルはNASAに公認された歴史的背景があり、そのストーリー性がコレクターの間で高く評価されていますが、レーシングにはそこまで強力なバックストーリーがないことも影響しているでしょう。
しかし、スピードマスターレーシングにも資産価値を高める要素があります。特に限定モデルや、流通量が少ないカラーリングのモデルはコレクター需要が高まり、結果的に中古市場での評価が上がることがあります。例えば、グレー文字盤にイエローアクセントを配した「326.30.40.50.06.001」などは、特徴的なデザインが魅力となり、特定の愛好家から熱い支持を受けています。
また、使用されているムーブメントや素材も資産価値に影響します。スピードマスターレーシングは、コーアクシャルムーブメントやシリコンひげゼンマイなどの高性能技術が取り入れられており、これらは長期的な信頼性とメンテナンス性を保証します。こうした技術的優位性が時計全体の評価を支え、資産価値にプラスの影響を与えています。
さらに、資産としての時計を考える上で重要なのが保存状態と付属品の有無です。箱や保証書が揃っていることは評価額を高める重要な要素となります。また、定期的なオーバーホールやメンテナンスを行い、時計の状態を良好に保つことも資産価値を維持するために必要不可欠です。スピードマスターレーシングもこの点は他の高級時計と同様で、メンテナンス履歴がしっかりしている個体は高く評価される傾向にあります。
このように、スピードマスターレーシングの資産価値は一概に高いとも低いとも言えませんが、特定のモデルやコンディションによっては十分な資産価値を持つ可能性があります。長期的な視点で見れば、生産終了による希少性の高まりと相まって、今後さらに価値が上がる可能性も十分にあると言えるでしょう。
コーアクシャルムーブメントの耐久性が中古市場での評価を支えている
スピードマスターレーシングに搭載されているコーアクシャルムーブメントは、この時計の大きな魅力の一つであり、中古市場での評価を支える重要な要素となっています。このムーブメントの特性と市場評価について詳しく見ていきましょう。
コーアクシャルムーブメントの最大の特長は、その構造が従来のレバー脱進機とは大きく異なる点です。コーアクシャル脱進機は摩擦を大幅に低減することを目的として設計されており、この技術により従来の機械式時計に比べてメンテナンス周期が長くなるほか、精度が安定するという大きな利点があります。具体的には、3〜5年ごとにオーバーホールが必要な従来のムーブメントと比較し、コーアクシャルムーブメントは10年近く問題なく使用できる場合もあるとされています。
また、クロノグラフ機能を搭載したモデルでありながら、スピードマスターレーシングのムーブメントは耐久性にも優れています。特に、シリコンひげゼンマイを採用しているため、耐磁性が向上しており、現代の生活環境で時計が磁気の影響を受けにくくなっているのです。この点は、デジタル機器に囲まれた現代の日常使いにおいて、非常に重要なアドバンテージと言えるでしょう。
コーアクシャルムーブメントのもう一つの特徴は、操作感の良さです。このムーブメントは操作が滑らかで、クロノグラフをスタート・ストップさせる際の感触が心地よいと評価されています。こうした細部にまでこだわった設計は、単なる機能性だけでなく、時計を操作する楽しさも提供しており、ユーザー体験の質を高めています。
中古市場において、こうした技術的な優位性は大きな評価ポイントとなります。特にオーバーホール周期が長いという特性は、中古時計を購入する際の不安要素の一つである「メンテナンスコスト」を抑えられるという安心感につながります。また、耐久性の高さは長期使用を前提とした場合の信頼性を高め、中古市場での価値を下支えします。
ただし、この高度な技術は製造コストを押し上げる要因でもあり、そのためコーアクシャルクロノグラフを搭載しているモデルは、同じ価格帯の他ブランドの時計と比較してもやや高価になる傾向があります。しかし、この価格差も含めて、技術と性能を考慮すれば、スピードマスターレーシングは中古市場において十分な価値を持つ時計だと言えるでしょう。結果的に、コーアクシャルムーブメントの信頼性と耐久性は、生産終了後もスピードマスターレーシングの評価を支え続ける重要な要素となっています。
人気カラーはグレー×イエローとブルーダイヤルが高評価
スピードマスターレーシング40mmのカラーバリエーションの中でも、特に高い人気を誇るのがグレー×イエローとブルーダイヤルのモデルです。これらのカラーリングが市場で高評価を受ける理由と、その特徴について詳しく見ていきましょう。
まず、グレー文字盤にイエローのアクセントカラーを配した「326.30.40.50.06.001」は、スピードマスターレーシングの中でも特に人気の高いモデルです。このカラーコンビネーションの魅力は、グレーという落ち着いた色味をベースにしながらも、イエローという鮮やかな差し色が効果的に使われている点にあります。文字盤のグレー×イエローは、モータースポーツをイメージさせる配色であり、「レーシング」というモデル名にふさわしいスポーティな印象を与えます。また、フォーミュラカーを連想させるこの配色は、多くの大人の男性に内在する「スーパーカーへの理由なき憧れ」を刺激する効果もあるようです。
インダイアル内の表面には「クル・ド・パリ(Clous de Paris)」と呼ばれるパリの石畳を模した模様が施されており、これがタイヤのパターンやカーボン製部品の表面を思わせ、よりモータースポーツの世界観を強めています。このような細部までこだわった仕上げが、コレクターからの高い評価につながっています。
次に、ブルー文字盤の「326.30.40.50.03.001」も人気の高いモデルです。このモデルの特徴は、ダークブルーに輝く文字盤とクル・ド・パリ装飾が施されたインダイヤルのコントラストが、スポーティでありながらも上品な印象を与える点です。また、このブルーカラーは44.25mmの後継モデルには存在しないため、希少性が高く、現在でも高い需要があります。
特筆すべきは、ブルーダイヤルのスピードマスターレーシングが日本市場で特に人気が高いという点です。クォークという販売店のブログでは「日本で人気が高いブルーカラーのダイヤルが入荷しました」という記述があり、日本のオーナーに特に好まれているカラーであることがうかがえます。ブルーという色は和の感性にマッチしやすく、日本人の好みに合致しているのかもしれません。
これらの人気カラーは、中古市場でも相応の評価を受けており、同じスピードマスターレーシングでも、ベーシックなブラック文字盤に比べると高値で取引される傾向があります。特に状態の良い個体や、箱・保証書などの付属品が揃った完品は、コレクターからの需要も高く、生産終了による希少性と相まって今後さらに価値が上がる可能性があります。
カラーバリエーションの選択は個人の好みに大きく左右されますが、投資的な観点から見ると、これらの人気カラーは長期的な価値の維持が期待できるかもしれません。ただし、あくまでも時計は身につけて楽しむものですので、最終的には自分が本当に気に入ったカラーを選ぶことが何よりも重要です。
値上がり傾向は特に限定カラーや美品で顕著になっている
スピードマスターレーシングの生産終了後、中古市場では徐々に値上がり傾向が見られるようになってきました。特に限定カラーモデルや状態の良い美品において、その傾向が顕著になっています。市場の動向を詳しく分析していきましょう。
値上がりの背景には、時計全般における価格上昇のトレンドがあります。近年の高級時計市場では原材料価格の高騰や製造工程の高度化、さらには需要の増加が、オメガを含む高級時計メーカー全体の価格改定を促しています。こうした市場環境の中、生産終了となったスピードマスターレーシング40mmも、希少性の高まりとともに価格が上昇する傾向にあるのです。
特に顕著な値上がりが見られるのは、限定カラーや流通量の少ないモデルです。例えば、先ほど述べたブルーダイヤル(326.30.40.50.03.001)は、後継モデルには存在しないカラーであり、その希少性から需要が高まっています。同様に、グレー×イエロー(326.30.40.50.06.001)も、特徴的なデザインが評価され、標準的なブラックダイヤルのモデルよりも高値で取引される傾向があります。
また、時計のコンディションも値上がりに大きく影響します。箱や保証書、余りコマなどの付属品が完備された「完品」と呼ばれる状態の個体は、特に高い評価を受けています。例えば、クォークの店舗ブログには「2021年のUSED品で、多少のスレ傷はありますが、ブレスレット伸びは殆どなく長くご愛用いただだけます。余りコマ含め付属品も揃っています」と記載されたモデルがあり、このような状態の良い中古品は需要が高く、値上がりしやすい傾向にあります。
地域による値上がり状況の違いも見られます。新興国市場でのオメガ人気の高まりにより、レーシングモデルの存在感も増しており、その結果として価格が上昇する地域もあります。また、二次市場での取引量が減少すると、希少性の観点から価格が上がる可能性も考えられます。このように、値上がり傾向は均一ではなく、地域やモデル、状態によって差があります。
ただし、値上がりは全てのモデルに均一に起きているわけではありません。特に定番のカラーバリエーションや、需要が限られるデザインの場合、値上がりの恩恵を受けにくいこともあります。購入を検討する際には、単に「生産終了したから値上がりする」と考えるのではなく、モデルの特性や市場動向をしっかりと見極めることが重要です。また、投資目的だけでなく、自分が本当に気に入ったモデルを選ぶという視点も忘れないようにしましょう。

まとめ:オメガ スピードマスター レーシング生産終了後も中古市場での価値は堅調
最後に記事のポイントをまとめます。
- オメガ スピードマスター レーシング40mmは2010年代後半に生産終了し、現在では正規店での新品入手はほぼ不可能となっている
- 生産終了の理由は明確に発表されていないが、ブランド戦略の変更や新技術導入のためと考えられる
- レーシング40mmの特徴は、日本人の腕にフィットする絶妙なサイズ感と多彩なカラーバリエーションだった
- 後継モデルとして2017年に登場したレーシング マスタークロノメーター(44.25mm)は、サイズアップとムーブメント刷新が特徴
- 中古市場での価格は30万円台から推移しており、定価(約50万円)からやや下落しているものの、比較的安定した価値を保持している
- グレー×イエロー(326.30.40.50.06.001)とブルーダイヤル(326.30.40.50.03.001)は特に人気が高く、中古相場も安定している
- レーシングが「安い」と言われる理由は、カラーバリエーションの多さによる需要の分散と、製造コスト削減の工夫がされているため
- コーアクシャルムーブメントの耐久性と操作性の良さは、中古市場での評価を高める重要な要素となっている
- 生産終了による希少性の高まりから、特に状態の良い個体や付属品が揃った完品は、今後さらに価値が上がる可能性がある
- 資産価値という観点では、他のスピードマスターモデルよりやや控えめながらも、リセールバリューは42%〜55%と高級時計としては平均的な水準を維持している
- 将来的な価値上昇を期待するなら、特に限定カラーや流通量の少ないモデル、状態の良い個体を選ぶことが重要
- 時計購入の際は投資目的だけでなく、自分の好みや使用シーンに合ったモデルを選ぶことも大切